文はCPだった 生成文法覚え書き

埋め込み文は、文をTPと仮定すると説明できない。

(1) わたしは [太郎が花子をほめた] 思う。
(2) 次郎は [太郎が花子をほめたか] 聞いた。
(3) I think that Taro is honest.
(4) I wonder if Taro is honest.

埋め込み文には、下線でしめされた C=補文標識 (complementizer) が現れる。なぜか。文は TP で完結せず、その上に C が入る位置があるからである。

(5) 太郎が花子をほめた

日本語では主節にも補文標識(のようなもの)が現れるのでわかりやすい。疑問を表す要素「の」は、Tの右側に現れる。

(6) Will you come here?

英語では、補文標識は主節には表れないが、疑問文のときに主語・助動詞の倒置 (subject-auxiliary inversion) が行われる。このとき、Tの主要部にある助動詞要素が、より上位の主要部位置Cに移動(前置)していると考えられる。

補文標識の出現と、助動詞の前置が同時には起こらない(「相補分布 complementary distribution」をなす)のは、これによって説明できる。

(7) I wonder [if you will come here].
(8) *I wonder [will you come here].
(9) If you will come here?
(10) Will you come here?

埋め込み文で疑問文を表すためには、Cの位置に補文標識がはいり、倒置はおこらない。主節の場合は、補文標識がなく倒置がおこる。Cの位置にいれられる要素は一つだけだからである。

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